人生は安酒とともに

笑いながら呑み、泣きながら呑み、ため息と嗚咽を酒に溶かしたもの以外に人生の味が語れようか。

『人生はプラスマイナス0だっていうやつは、決まってプラスのやつなんだ』

なんて球磨川先輩は本当にいいことを言う。

 

今日はとあるリユースショップでガラスケースに並ぶ、それはそれは高そうな酒が一堂に会する様を見てそう思った。

 

あんな高い酒を、気高い酒を、おそらく私は一生手にすることがない。

たとえそれが不要品として一度売られたものであっても。

たとえ私が一時的に持ち金が増えたとしても。

私が選ぶのは、いつだって大量に陳列された最安値の酒だ。

 

もとより酒を酔うための、見たくない現実の解像度を下げるための道具として扱い、高い酒を美味しそうに飲む人ななりきる為のコスプレ用品としているのだがら、当たり前のことかもしれない。

 

そこで思った。人生の生き方と酒の選び方は似ているのかもしれないと。

ウェーイ!とか言ってそうな人は炭酸の入った、いかにもテンションのあがりそうなものを選ぶし、人生を楽しむ努力をかかさない人はお酒もやはり美味しそうな、たまには珍酒を選んだりするし、そのすべての逆は、安酒なのだ。コスパの良さ。度数の高さ。それしか見ない。

 

いかに道具として優秀か。それしか、それでしか物事を図れないのだ。

 

なんと空虚な事だろう。なんて寂しいことだろう。

でもその虚しさこそが、今の私の求める酒の味なんだ。

 

そう思うとパッケージにでかでかと「おいしい」とかかれた、悪酔いする酒もなんだか愛おしく思えてくるものである。